西原理恵子『毎日かあさん』

 りえぞう先生の漫画を最初に知ったのは雑誌『マルコポーロ』で連載していた「鳥頭紀行」を読んだとき。自虐的なまでに身体をはった旅行を敢行し、持ち前の毒舌で紀行文を綴っていくそのスピリットに毎回感服、毎号購読していたのだけれど、ある時突然本誌が廃刊。その頃(大学2年)は深夜のコンンビニバイトをやっていて、その月の号も陳列棚に自分で並べたのだけれど、割引がきく生協で買おうと思ってその時見送ったのが今生の別れ。後日、生協で探したときにはもうなくなっていて、同誌に載ったホロコースト否定論が国際的なユダヤ人団体からの抗議を受けたことをきっかけに回収されたからだ、と後に知る。

毎日かあさん3 背脂編

毎日かあさん3 背脂編

 そんな因縁のあるりえぞう先生の新刊『毎日かあさん3背脂編』。二児の母になって漫画の方もパワーアップした感じ。毎度の育児ネタにも共感することしきり(赤ちゃんの泣き声がすると反射的に目が覚めて、よその子どもでも構ってしまうパブロフおばさん、とか)。へたくそなのに、親しみを感じる絵柄(戸塚ヨットスクール校長似の早期教育の精霊、とか)。長男(小3?)に関する「バカ」(おしっこを我慢して立ったままTVゲームをする)、「どろんこ」(乾くと埴輪のようになる)、「おちつきがない」(信号待ちのあいだジャンプしてて車道に転ける)などの描写のリアリズムにも一読三嘆。『ぼくんち』のような直截的な「叙情」にはついていけないものがあるけど(「思い出」化され無害化されすぎている、というか)、こういう「無頼」で韜晦された「叙情」にはぐっとくるものがある(参照西原理恵子 - Wikipedia)。
 いずれにしても、その肩の力の抜け具合が、世のお母さん、お父さんに育児の楽しみを再発見させて、支持されるゆえんだと思う。