カナダ軍

 ティム・ホートンズほどではないけど、カナダ軍の存在もよく意識します。近所に在郷軍人会の地区支部というか溜まり場があって、昼間から大人たちが無聊をかこっているのをよく見かけるんですね。ハリウッド映画で見るようなあれです。とはいえ、加軍は米軍とは全然違います。ロシアに次ぐ世界二位の国土を持ちながらカナダの防衛費はG8中最低水準。アメリカと地続きなだけに何かと社会的・文化的な類似性が強いカナダですが、こと軍隊についてははかなり違うようです。なぜかっていうと、それもまたアメリカと地続きだからという面が大きいようです。19世紀半ばくらいまでの加米は仇敵関係にあったわけですが(なにしろアメリカとの戦争で負けた連中が北に逃げて創ったのがカナダなわけですし)、20世紀以降に経済的な相互依存が進むと加米間での戦争は考えられなくなってきます。その後、冷戦が始まると北極圏越えのソ連ICBMに備えて加米共同でNORADを運営するようになります。で、冷戦も終わるとNORADもいよいよ仕事がなくなって麻薬の密輸追跡とかをやってなんとか組織の存続を図ろうとするようになる。で、このへんでカナダ軍の存在意義はどこにあるのか、という話が出てくる。というのは、世界最強の軍隊をもつアメリカの隣国にちょっかいを出す第三国はいないし、逆にそのアメリカがカナダに攻めてきたら抵抗しても無駄なので、いずれにしても軍隊をもつ必要はない、という話の流れになるから。
 こうしたカナダ軍の自分探しはかつては国連PKOへの熱心な参加というかたちで解決されていました。カナダは冷戦中に行われた国連PKOに唯一の例外を除いて全て参加しています。というか、そもそも平和維持部隊の創立を提案したのもカナダの外相だったんですね。ただし冷戦中はニッチ産業だったカナダのPKOも、90年代に入るとイデオロギー対立に悩まされることなくアメリカも参加できるようになったので、かつてのお家芸という感じではなくなってきたようです。
 ウィキペディアでカナダの在郷軍人会の項目を見てみてさらに何とも言えない気分になりました。「2005年、在郷軍人アルバータ支部で誤って『旗を高く掲げよ』を募金用の宝くじの宣伝テーマソングに使ってしまうという事件があった。」 この歌、ナチスの歌で、現在ドイツで歌うと現行犯逮捕されるらしいです。ちなみに、こんな曲です。