夏休み文楽

senzan2008-07-25

 神戸に出張した帰りに大阪で文楽を見てきました。
 うだるような暑さの中、お昼にお好み焼きを食べて、第2部の「鎧の権三重帷子」と、第3部の「国言詢音頭」を続けてみました。6時間の長丁場ですが、至福の時間でした。
 「鎧の権三重帷子」は単身赴任で夫が家にいない既婚女性(おさゐ)の無意識、心の機微がえぐりとられいて、目を離すことができませんでした。おさゐの子どもたちへの接し方、彼女の父が足しげくおさゐの家に出入りするわけ、すべてが彼女の心理的な危うさをよく表現していました。そんな妻をもった夫が姦婦おさゐを切るシーンでは彼の安堵の声が聞こえてくるようで、怖すぎです。『冥途の飛脚』といい、近松の天才は、その名ばかりでなく、その作までももっと知られるべきです。文雀の人形も細かいところまで間断なく演技していて、感嘆。汗かきかきの嶋太夫の語りもよかった。
 「国言詢音頭」は首が飛び、胴が裂け、顔が割れるスプラッターな内容でしたが、文楽ならではの演出で面白かったです。前から二列目という最高の席だったので、人形使いの表情や視線の動きまでよく見えて感動。玉女をこんな至近距離で見られる贅沢! こんないい席、東京じゃまず期待できません。最後に初右衛門が血塗られた足を洗い流し、本水の雨のなか立ち去るシーンは圧巻。