”Best supporting neocon”
今日の研究会中に考えたことをメモしておく.「臆面なき帝国主義者」M.ブートがジョージ・クルーニーについて”Best supporting neocon”と評価している.彼が今年アカデミー助演賞(Best supporting actor)をとった『シリアナ』は中東の石油利権をめぐってアメリカの情報機関が暗躍する様を描いた作品で,普通に見ればアメリカの外交政策を批判した映画ということになる.けれども,ブートに言わせると,これこそネオコン(新保守主義)の伝えたかったメッセージなのである.なぜならアメリカが中東へ介入するのは,石油のためではなく,民主化のためなのだから.
Even "Syriana," which has been criticized for its America-bashing by a lot of conservatives (myself included), has a neocon message. It's a protest against the influence of Big Oil on U.S. foreign policy. Neocons couldn't agree more. They argue that the policy supported by the oil companies — backing Middle Eastern despots — is leading us to ruin. It only helps create anti-American suicide bombers — as illustrated by "Syriana." The movie suggests that we should be helping liberal Arab reformers, like the fictional Prince Nasir, just as neocons have been urging.(M.Boot @LAT 15/3/2006)
もちろんこれはクルーニーへの皮肉だけど,他面である種の帝国主義者の屈折ぶりが垣間見えて興味深い.まず「中東の民主化」というのはアメリカの公式見解だけど,日本人の多くはそれをベタには受け取ってはいないだろう.石油利権が本音で,民主化は建前だと考えている.だから『シリアナ』もいわばネタばらし映画ってことになる.この見方からすると「中東民主化論」はあまりにナイーブか,偽善的なものである.しかし,ブートの議論はそのどちらでもないように思う.第一にクルーニーを皮肉るくらいだからそんなナイーブじゃない.第二に偽善というには,中東民主化に積極的すぎる.建前ならもっと表層的でもいいはず.それなら素直に公式見解言ってりゃいいのに,そうならないところにこの種の帝国主義者(アメリカは,大量破壊兵器がテロリストに渡らないようにPSIやって,人権抑圧するような専制国家をつぶし,まともな統治ができない破綻国家を立て直すために介入せよ,と考える立場)の論理がもつ屈折ぶりが見えるように思う*1.
- 作者: ロバート・ベア,佐々田雅子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/02/17
- メディア: 単行本
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