ケベックは一個のネイションであるべきか

senzan2006-11-28

 フランス系住民が多数を占めるケベック州の分離独立問題が再浮上しているという話.昨日,ハーパー首相が提出していた「統一されたカナダ内部における一つのネイション(国家あるいは民族)としてのケベック」動議が圧倒的多数で可決された(266対15).これはケベックの独立を肯定するものというよりも,独立支持派によるより積極的な主張を牽制するために提出された動議で,これによって特に何が変わるというわけではない(連邦レヴェルでは1960年代末に英仏二言語主義が制度化され,95年にはケベックを「独自な社会」として認める法律ができた一方で,ケベック州レヴェルでは82年の連邦憲法を今でも批准していないけれど,かといって95年の州民投票でも独立を選択するところまではいかなかった,という状況).その点では大騒ぎするほどのことではないのだけど,ちょっと興味をひいいたのは,これに反対しているある一人の閣僚が辞任したこと.「ケベック人を一つのネイションとして承認することは,たとえ統一されたカナダ内部のことであったとしても,エスニック・ナショナリズムを容認することに他ならないと考える.それは私には支持できない」と辞任の理由を述べたのはマイケル・チョン連邦州間関係担当大臣.名前から想像できるように彼は中国系なのだけど,いわゆるビジブル・マイノリティという感じではなく(ドイツ系でもあるらしい),こうした背景を考えるにつけ動議への反対という行動に複雑なものを感じさせる*1.それで世論の方はどうかというと,ケベック以外では国民の77%が「ケベックが一つのネイションを形作っている」という考えに否定的なんだそうだ*2
 というわけで,行きつけのコーヒー屋のレジにこんなチップ入れ兼アンケート(これ自体はいつもあって,行事にちなんだ質問でチップをはずませるという商売上手)があったので(画像に見えるように,このへんでも反対派の方が多いようで),ちょっと書いてみたのですが,この話,一昨日記事にした『美味しんぼ』オーストラリア編で盛んに持ち上げられていた多文化主義の問題にも通じる話.経済的な豊かさもあって相対的に成功している多民族共生ですが,将来どうなっていくのか,気になるところです.