家族滞在(番外編) 

 月ほど家族三人で暮らしたときのことを回顧しつつ、その中で知ったトリヴィアなどを書き留めておきます。

・ビーバー
 携帯電話会社ベルのCGキャラクターとしてテレビCMで頻繁に目にする二匹のビーバーがいます。その名もゴードン(ボケ担当)とフランク(ツッコミ担当)。801ネタにもされる人気者ですが、もともとはカナダ国家を象徴する動物で、大陸横断鉄道のエンブレムや5セント硬貨にも描かれている由緒ある存在です。まだ雨期が続いていたので家ですごす時間が結構あったんですが、テレビCMでこのベル・ビーバーを何度も見たので家族全員はまってしまいました。

・クジラ、シャチ、イルカ
 日本語でも英語でもクジラとイルカは別の言葉で表現され、日常的にも区別される生き物ですが、実は生物学的な区別は明確ではないようです。概ねサイズが4m以上をクジラ、以下をイルカとして慣習的に区別していますが、それも厳密なものではなく「ベルーガ」は日本語では「シロイルカ」と呼ばれています。見た目のかわいらしさもイルカをクジラから弁別する特徴の一つでしょうが、イルカ社会におけるいじめや性的暴力を報告する研究もあって、案外陰湿なやつとか。彼なりの「クジラ」イメージをもっていた息子が、シャチ観察の後に「クジラを見ていない」と発言したのも、このへんの事情を考えるとむべなるかなと思います。

・針葉樹林
 当地の先住民によって生活用品からトーテムポールまで多岐にわたって利用されてきたシーダーはしばしば杉と訳されますが、実際にはマツ科です。樹高も枝振りも松というよりは杉っぽいのですが、分類上はマツ科で、当地に多いヒマラヤスギもマツの一種だそうです。この地域には、シーダーの他にもファー(モミ)、ヘムロック(ツガ)、イュー(イチイ)などの針葉樹が広がっており、いずれも街のストリート名にもなっています。これらの大木はダウンタウンの西にあるスタンレー・パークで身近に見ることができますが、残念ながら昨年11月の嵐で多くの倒木が発生してしまいました。そのため公園の半分、キャピラノ渓谷は現在も閉鎖されたままで、いつ復旧するかも未定だそうです。

・イングリッシュ・ベイ
 ダウンタン南西側にイングリッシュ・ベイという入り江があって、金融・商業エリアからちょっと離れただけで静かな海辺が広がる別世界に来ることができます。ここには先住民が友好と歓待を表す道しるべとしてかつて作っていた石積みの人型イヌクシュクがあり、またこの州で亡くなったエイズ患者のメモリアルなども設置されています。ここがメモリアルの場所として選ばれたのは技術的な理由が大きいようですが、ビーチのすぐ北側にはゲイ・エリアでもあるデイヴィー通りがあり、メモリアルも当地のゲイ・プライドに参加したりしているそうです。遅まきながら今回子どもとサイクリングして初めて知りました。

サスカッチ
 雪男のことを英語ではビッグ・フットといい、先住民はこれをサスカッチと呼びました。この州で愛飲されているビールの銘柄にコカニーというのがありますが、そのCMでもコカニーを箱ごと盗むサスカッチをレンジャーが追いかけるというシリーズがあって、ルパンと銭形よろしく、いつもレンジャーがサスカッチに出し抜かれています。このCMを見ると愛嬌のあるやつですが、しかし、子どもを寝かせつけるときには「サスカッチが来るよ」とさんざん脅迫するのに使わせてもらいました。もっとも、ママがあんまりにも「寝ないと電話掛けてよぶよ、1-800-サスカッチ-サスカッチ」(800番台は北米ではフリーダイヤルで、また電話のダイヤルには数字に対応するアルファベットがふってある)というので、最後には子どもも真似するようになってしまいましたが。

・お酒事情
 この州では道路や公園、駅といった公共の場所でお酒を飲むことが禁じられています。お酒の販売も州政府直営の量販店が地域ごとにあって、あとは認可された小規模の酒屋がちらほらある感じで、コカニーのホームページなんか法定年齢を入力しないとアクセスできないという徹底(やけくそ?)ぶりです。またパブやバー、レストラン内での喫煙も禁止で、そのためお酒を飲みつつ煙草も楽しみたいひとたちはパティオという建物に隣接した歩道の一角の柵の中に追いやられていて、寒い日にはやけくそ気味の辛党を見ることができます。子連れでバーにはいるのももちろん御法度で、びっくりするくらい街中に桜が咲いているのに(酒入りの)花見ができないのも残念です。

・夏時間
 英語ではサマー・タイムとは言わず、デイ・ライト・セービングといいます。例年4月から始まるようですが、今年は法律が変わって3月の第2週末から始まることになりました。が、そんなことはつゆ知らず、直後の日曜、月曜は1時間勘違いして行動していました。旅程には飛行艇による移動やホッケー観戦などもあっただけに、タイミングが悪ければ大失策を犯すところでした。けれども、前週より1時間昼が長くなった計算になるので、朝が弱い家族にとっては随分得した気分でした。ちなみに、この日記を書いている「はてな」は社長が米西海岸にいるくせに、(まだ?)夏時間に対応していないため1時間ずれて時刻が表記されているようです。(3月28日追記)