イエローからyellowへ

senzan2008-01-31

 家庭での会話を子どもが外で漏らしてしまって、先生や他の保護者が内輪の話を妙によく知っている、というのはどこのうちにもある出来事だと思います。親にとっては赤面ものでも、子どもには悪気なんかありません。そこで我が家ではデリケートな話題を子どもの前で話すときには英語を使うことが時々あります。
 こういう家庭内二言語主義は移民の家族などではめずらしいものではありませんが、我が家の場合、その弊害として子どもの英語嫌いが発生してしまいました。「英語=自分をコミュニケーションから排除するためのツール」という刷り込みがなされてしまったため、簡単な英単語を教えようとしても拒絶反応を示すことがあります。例えば年末くらいからカードゲームのUNOが空前のブームになっているのですが、そこで「この色はyellowというんだよ」と教えても、子どもは「イエロー」としか発音してくれませんでした。
 これはなかなか興味深い現象です。子どもなのだから「yellow」と聞けば、素直に「yellow」という発音をオウム返ししてくれるだとう、というのは親の思いこみでした。想像するに、彼の脳内で「yellow」→「黄色」→「イエロー」というふうに変換しているみたいなのです。耳で聞いた音が何を意味するのか理解した上で、それを耳で聞いたとおりに繰り返さず、かといって日本語に翻訳するのでもなく、「彼が知っている英語」へと二重に変換してから表現しているわけです。なぜそんなことになるのでしょうか。英語を使う親への反抗、もう言語獲得の臨界期をすぎた、日本語の体系内部で部分的に英語を使うことの難しさ、それともゲキレンジャーとかの「色物」戦隊のカタカタ発音のせい……。
 その彼が、この日曜日の夜に読んでくれと自分で選んだのが『モンスターズ・インク』の絵本でした。これは何年も前に義弟がお土産でくれた英語の絵本だったのですが、そのまま読んでも理解はできず、翻訳しながらというのも調子が悪いせいか、あまり手を出してきませんでした。それがこの夜を境に毎晩『モンスターズ・インク』です。一体、何が彼に英文読書を目覚めさせたのでしょうか。
 実はその日の昼間、家族で友人宅に遊びに行っているんですが、そこで一つ年上のお兄ちゃんと遊んだことがきっかけになっているのではないか、と思うのです。4月からオランダに赴任する友人の家では子どもを現地校に入れる予定もあって、家庭内で英語やオランダ語を楽しく練習しているようでした。その様子をみてうちの子も感銘を受けたのかもしれません。外国語は誰かを排除するためではなく、友だちを増やし、世界を広げるためにある。
 親があれこれ勉強や外国語を教えるよりも、同じ年頃の友だちから得る刺激の方が子どものやる気をずっとたくさん引き出すことができる、というのを認識させられた出来事でした。

Monsters, Inc. (Read-Aloud Storybook)

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