イグナティエフ、カナダ自由党党首に

 ジャーナリストで、ネオコン的な外交政策を支持してきたマイケル・イグナティエフがカナダの自由党党首になったそうです。とりあえず暫定で。
 カナダの自由党は日本の自民党のような政党で、今世紀の大半を政権党として国政に携わってきました。
 今、カナダ議会は歴史上かつてない混乱のさなかにあります。10月の選挙では、保守党も自由党も多数派を形成できませんでした。金融危機の中、強力なリーダーシップが求められるにもかかわらず、ハーパー政権の基礎は脆弱なままです。他方、議席を減らした自由党でも、ディオン党首が責任を取って辞意を表明したかと思うと、一転、保守党を外した連立政権の首班となることが決まったり、と大揺れでした。結局、ハーパー首相は総督に議会の停会を求めるという大技に出て、ディオンは何度目かの正直で辞任しました。日本ではタイの反政府運動ばかりがマスコミの注目を集めていましたが、実はカナダも立憲的な危機にあったわけです。
 こうした状況で自由党は党勢立て直しを図ってイグナティエフを党首に選びました。彼はカナダの政界では落下傘候補で、政治的キャリアはまだ2年ほどですが、長くジャーナリストとして活躍し、日本でも『軽い帝国』など著作が何冊も翻訳されています。知名度はあっても、政治的な手腕は未知数です。
 イグナティエフは1947年生まれのベビーブーマー世代で、ハーパー首相よりはずっと年長です。けれども、アメリカの同盟国でありながらも対外政策では一定の距離をおき、人権の理念を標榜しつつも国益ベースでの対外支援・介入を行ってきたカナダにとって、彼の外交論は異色です。アメリカでオバマが大統領選挙に当選したように、カナダでもなんらかのChangeが求められているということでしょうか。

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