マータイの戦略

中学校高校の英語の教科書にワンガリ・マータイの話が載っています。
うちの彼女が授業で使っているので、知りました。
マータイは、2004年に持続可能な開発への貢献でノーベル平和賞を受賞したアフリカの環境保護活動家です。
彼女が日本でも知られているのは『MOTTINAI』キャンペーンが大きいと思います。
彼女は2005年に来日した折に「もったいない」というコンセプトを知り、これに感銘を受けて海外でもこの考えに基づく行動を広めようとしているそうです。
たしかに北米のスーパーや飲食店での食品の廃棄率をみて、彼らは「もったいない」とは思わないのだろうか、という疑問はつねづねありました。
外国にはそのような発想がないのだと言われると、そうかもしれない、と納得する程度には実感があります。
しかし、もったいないキャンペーンがどれくらい海外、とくに途上国において実効性のある取り組みなのかは、見当もつきません。
それよりも興味深いのは、海外の権威が日本の「伝統的な価値」を国際化するということの戦略的な意味です。
日本の政府も企業も国民も、ノーベル賞受賞者が日本の伝統を礼讃し、輸出しようとしてくれたことに気を良くしたはずです。
教科書に載せるくらいですから。
財布の紐も緩んだことでしょう。
これは日本からお金を引き出すには実に上等な戦略です。
振り返れば、かつての日本も同じようなことをしていたはずです。
途上国の人間がキリスト教の価値観を称賛すれば、西洋人は気を良くしたことでしょう。
ただ、マータイが「もったいない」を選ぶのは、どうせ利用するにしても、ヨーロッパ中心主義を強化するようなキリスト教礼讃よりは日本文化の礼賛を選んだ方が、また気分は悪くないからではないでしょうか。
一つのケース・スタディとして彼女の振る舞い、身の処し方は学ぶべきものが多いように思います。(2009/04/14訂正)