どんな有名人が選挙に出るのか?

衆議院はいつ解散、総選挙をしてもおかしくない状況です。たぶん今度の選挙にも有名人がたくさん出馬することでしょう。それでは、一体、どんなひとが選挙に出馬するのでしょうか。
まずは帰納的に考えてみましょう。つまり、実例を通して、どういうパターンがあるか考えてみたいと思います。
選挙に出馬する人物には、大きくプロとアマに分けられます。プロというのは、現職を筆頭に、二世三世や官僚、党専従職員のように多かれ少なかれ政治に関する知識とキャリアがあるようなタイプです。これに対してアマというのは、政党の公募に応じて選ばれた脱サラ組か、あるいはテレビで有名なタレントのように、これまでの人生でほとんど政治とは無縁だったタイプです。
ここではテレビに見かける有名人に話をしぼってみましょう。選挙に出馬する有名人は4つのカテゴリーに分けられます。すなわち、タレント、スポーツ選手、テレビ学者、旬の人です。
第一のタレントには、他に俳優や局アナも含みます。例えばガッツ石松大橋巨泉丸川珠代などです。
第二のスポーツ選手には、指導者も含みます。例えば橋本聖子横峯良郎荻原健司などです。
第三のテレビ学者には、テレビ弁護士や評論家も含みます。例えば舛添要一田嶋陽子橋下徹などです。
第四の旬の人というのは、何らかの理由でテレビ露出の多かった人物です。例えば川田龍平堀江貴文義家弘介などです。
これらの中にはガッツ石松ホリエモンのようにそもそも当選しなかった人たちもいますし、当選してもほどなくして辞めていった大橋巨泉田嶋陽子のような人たちもいます。辞めはしてはいないけれど、丸川珠代荻原健司のように存在感の薄い陣笠議員もいれば、舛添要一橋本聖子のように地道にキャリアを積んで、頭角を現している人たちもいます。さらには(厳密には国政ではありませんが)橋下徹東国原英夫のように台風の目になるようなケースもあって、一概に、有名人だから政治家として無能だとは言い切れません。
次に演繹的に考えてみましょう。まず立候補する動機・目的に関するマトリクスを作ってみます。
選挙に出馬するのには、その動機が個人的か社会的かという点で、2つに分けられます。また、その動機が積極的か消極的かという点でも、2つに分けられます。この2つの区別を組み合わせると、都合、4つの動機・目的に関するカテゴリーがえられます。
第一のカテゴリーは「個人的・積極的な動機」です。これは「名誉欲」とも言いかえられます。金と地位は手に入れたが、まだ名誉がないというような成り上がりタイプの人物が、このカテゴリーの動機から政治家になろうとする場合があります。例えば、ヤンキー先生義家弘介ライブドア元社長の堀江貴文などがこのタイプかもしれません。
第二のカテゴリーは「個人的・消極的な動機」です。これは「落ち目」とも言いかえられます。芸能界やスポーツ界などで落ち目の人物で、現在の立場にあまり未練のないようなタイプの人物が、このカテゴリーの動機から政治家になろうとする場合があります。例えば芸能界をセミ・リタイアしていた大橋巨泉、スキャンダルのあった東国原英夫などです。選挙に出馬すればマスコミによる過去の粗探しが待っています。失うものが多い立場の人間には無視できないコストでしょう。また彼らにどれだけ改革意欲があるのか疑問です。巨泉はすぐに辞めてしまいましたし、東国原に政治とステージの区別があるようにも思えません。
第三のカテゴリーは「社会的・積極的な動機」です。これは「改革意欲」とも言いかえられます。例えば、このカテゴリーに該当するのが拉致被害者家族の増元照明や薬害肝炎訴訟の福田衣里子などです(福田は予定)。この人たちの動機は日本の外交や行政を変えたいというものなので、個人的ではありません。また、職能団体や宗教団体などのすでに権益を確立している組織の後援を受けているわけでもないので、消極的(防衛的・保守的)ではありません。
第四のカテゴリーは「社会的・消極的な動機」です。これは「既得権益」とも言いかえられます。例えば医師会や日教組、宗教団体の権益を保守するために、その推薦を受けて立候補するようなタイプの人物です。すでに一定の集票マシーンがあるわけですから、有名人がその知名度を活用しなければならない必然性はありません。よってこのカテゴリーの動機で出馬する有名人はあまり多くありません。
このように演繹的に考えてみると、選挙に出そうな有名人というのが予想できます。有名人なら誰でも出馬するわけではありませんから(例えばタモリやさんまはいくら有名でも出ない)、動機を基準にして候補者を絞り込むことが有効です。
第一の「名誉欲」のケースでは、島田洋七石川遼の親族が考えられます。横峯さくらの父親だって当選したんですから、石川遼の父親や叔父であれば安泰でしょう。また宮根誠司やある種のテレビ弁護士もあるかもしれません。
第二の「落ち目」のケースでは、みのもんた星野仙一が考えられます。二人とも中年以上に一定の支持者がいますし、テレビ不況とWBC以降、彼らに今後の展望があるようにも見えません。北京オリンピックで引退した朝原宣治なども、あるかもしれません。
第三の「改革意欲」のケースでは、湯浅誠田母神俊雄が左右両翼の筆頭でしょう。また、藤原和博陰山英男など教育改革で実績のあった人物や、勝間和代赤木智弘のようなロスジェネ世代の偶像も、考えられます。このカテゴリーはある意味で日本社会の鏡像といえるかもしれません。
もちろん以上の分類や予想は当人や関係者から聞いた結果ではありません。出馬の動機や立候補の予定というのはまったく私の想像にすぎません。
ただ、郵政解散で「刺客候補」が話題になり、来るべき総選挙で「世襲」が争点になっている現状では、有名人と政治的リクルートの関係について考えておくのは無駄ではないと思います。だから、以上の「予想」というものも、未来に関わる判断というよりも、現在の日本政治のあり方に関する記述というふうに受けとめてほしいと思います。