天皇と日系人の交流

senzan2009-07-17

オバマ大統領によって、アメリカ連邦最高裁判所判事に指名されたソトマイヨールが、太平洋戦争中の日系人強制収容所について最高裁は「間違った決定」をした、と述べたそうです。ソトマイヨールはヒスパニック系で初めて最高裁判事に指名された女性で、現在、指名承認のための公聴会が議会で行われています。
http://www.afpbb.com/article/politics/2621192/4359898
太平洋戦争が始まって間もなく、1942年2月、アメリカのローズベルト大統領は敵性外国人を強制収容する大統領令を発しました。この措置の問題点は、アメリカ生まれのアメリカ国籍を持つ日系2世についても対象としたということ、また同じく交戦国であったドイツやイタリア系の移民については対象としなかったこと、です。同様の措置はカナダ政府によっても行われました。
こうした人権侵害、人種差別に対する政府による公式の謝罪と補償は、アメリカでもカナダでも、すでに1988年に行われています。それでもソトマイヨールがこの件について改めて態度を表明したのは、黒人を抜いてアメリカ最大のマイノリティとなった、ヒスパニック系初の最高裁判事として立場をはっきりさせておく必要を感じたからでしょう。
ところで、これと同じ時期に、日本の天皇と皇后がカナダを訪問し、日系人と交流していました。カナダには現在8万人前後の日系人がいると言われています。戦前に移民した日本人の子孫たちはすでに4世、5世にまで達しています。天皇と皇后はオタワ、トロント、ビクトリア、バンクーバーとなど訪問した先々で、強制収容の経験者を含む、こうした日系人たちに声掛けをし、話し合われる機会をもちました。なかにはバンクーバーの旧日本人街のように、現在はカナダで指折りの治安の悪い場所にも、わざわざ足を運びました。
私はこうした天皇の活動は非常に意義深いものがあると思います。第一に強制収容の当事者や差別を受けてきたその子どもたちに対する慰藉になること。第二に故国との縁が薄れつつある在外日系人とのネットワークが再構築されること。第三に日本社会におけるゼノフォビックな排外主義に対して反省を迫る契機になること。
天皇の外国訪問は国際的な意義だけでなく、国内に対するある種の反射的な作用もあるのではないか、と思います。