本屋

 久しぶりにダウンタウンブックオフに行ってみたら,店内で工事をしている.聞けば,隣のテナント部分にまで店舗を拡張するのだとか.その時は景気のいい話だなくらいに思って流したのだけど,その後ほどなくして20歳前後の男二人が「え,何,ここつぶれるの?つぶれるんだ〜」などと大声で勘違いした話をしながら入ってくる様子を目撃するに及んで別の感慨がわいてきて,不思議な気がした.連中に対する殺意を覚えるとともに,なんだかんだいっても自分はこの本屋が好きだったのだということ,もっと言えば自分が中高生の頃に足繁く通った地元の小さな本屋に似たものがあることに気がついた.あのころの自分は,地元の本屋の品揃えの悪さに不平をこぼし,たまに行く三宮センター街ジュンク堂(まだ神戸ローカルだった)ですごす時間を無上の喜びとしていたけれども,それでもなお地元のそれは自分を外側の世界とつなげてくれる数少ない回路のひとつであり,10代の自分にとって欠くことのできない構成要素をなしていた.そんなわけで期せずして小説好きだった過去を思い出した自分は,うさんくさいカナダにもいることだしと,長門有希にならって『ハイペリオン』などを買ってみたりしたのであった.