ヴィクトリア

senzan2007-02-13

 かつて帝国の版図であったところにはどこでもある地名、ヴィクトリア。近代のアレキサンサンドリア。カナダにも香港にもニュージーランドにもアフリカにもあります。ここオタワもヴィクトリア女王の治世に首都となって以来、今年で150年になります。議会の隣で獅子を従えて睥睨するその像を見ると、この国ではオーストラリアのような共和制が争点になることは当分ないだろうという気になります。でも、そんな土地柄のこの街も実は過去にその一部が「オランダ領」になったことがあります。第二次大戦中ナチスの侵略から逃れてこの地に亡命していたオランダ王室のユリアナ(戦後に女王)が三女をもうけたとき、その娘の王位継承権を維持するためには二重国籍を避ける必要があったらしく、時のカナダ政府が入院先の市民病院を一時的に「治外法権」にし、「オランダ領」とみなしたそうです。それじゃあ同時期に生まれたカナダ人の子どもはどうなるんじゃいという疑問もありますが、「女王」を認めている場合でも王朝の連続性を維持するのはそれだけ茨の道ということなのでしょう。そういえば山田風太郎も『ラスプーチンが来た』でヴィクトリア女王の家系に現れた遺伝病について触れていますが(本作は血友病を悲劇のガジェットにしていて個人的にはあまり好きではありません)、日本でも類似の事例に関して大正期に山県有朋が失脚しています。先般皇太子家族が訪問したオランダの王室ではここ100年女王が続いているそうです。