タマニャンとカナダ

 今朝の新聞でタマニャンが埼玉県新座市にある東京都の飛び地について解説していました。どういう経緯かはっきりしないそうなのですが、新座市内には南側に隣接する練馬区の小さな飛び地があって、現在も七軒の住宅があります。ここに住む人たちは行政区部分上は東京都民ですが、水道などは埼玉側のサービスを利用しています。当然、郵便の誤配など不便もあって練馬から新座への編入も模索されたようですが、住民の意向がこれにそわなかったために、今日まで飛び地状態が続いているそうです。やはり埼玉県民になるのは嫌なのでしょうか。
http://mytown.asahi.com/saitama/news.php?k_id=11000160712080001

 今回の記事は埼玉県民にとってけっして心中穏やかでないテーマです。タマニャンの最後の感想、「不思議だにゃん」という言葉にもなにか邪なものを感じないわけではありません。けれども、タマニャンそれ自体が埼玉県民の屈折した感情を表す異形のキャラキターであるせいか、東京に対する複合観念が若干風通しのよいものになっているような気もします。
 ところで、ここで連想してしまうのが、カナダのビール会社、モルソンによる”I am Canadian”という評判になったCMです。モルソンの主力商品はその名も「カナディアン」というビールです。このCMでは一人の青年がスクリーンを背景にして舞台に立ち、アメリカに対するカナダ人の思いの丈をぶちまけます。


 やあ、僕は木こりでもないし、毛皮商人でもない。イグルー(イヌイットの住む雪氷の住居)には住んでないし、クジラの脂身を食べたり、犬ぞりを持っていたりはしない。
 (…)僕はバック・パックにカナダの国旗を堂々と縫いつけることができるし、警察よりは平和維持を、同化よりは多様性を信じている。ビーバーは本当に誇り高く、気高い動物だ。
 (…)カナダは世界で二番目に大きな国だし、アイス・ホッケーでは一番の国、北米で最高の場所なんだ。僕の名前はジョー、そして僕はカナダ人だ!

 ジョーはそう言い終わると、「ありがとう」と行って一礼します。熱弁をふるっても折り目正しいところが、やっぱりカナダ人らしい、というオチです。このCMでもやはり国境の南側に対する複合観念がユーモアを通して昇華されています。
 さて、このカナディアンのCMにはいくつかのおまけがあります。
 このCMで人気になったジョー役のカナダ人俳優がキャリアアップのためにロサンジェルスに引っ越してしまったこと、モルソン社がアメリカのクアーズ社に買収されたことで、この”I am Canadian”キャンペーンは終了してしまったこと、そしてケベック人による”I am not Canadian”というパロディ版が作られたことです。
I Am Canadian - Wikipedia


 俺は失業者ってわけじゃないし、アメリカからタバコを密輸入しているわけじゃない。俺は朝からペプシやメイ・ウェスト(ロッテのチョコパイみたいなお菓子)を食ってるわけじゃないし、セックスしながらホッケーを見たりなんかしない。
 (…)ケベックはメイプル・シロップ生産高で世界一だし、セリーヌ・ディオンとロック・ボアジーヌの故郷で、誰もがよろしくやっていて、法定飲酒年齢なんて単なる目安にすぎない、そういうところなんだ。俺の名はギー、そしてカナダ人じゃねー!

I Am Canadian - Wikipedia

 このケベック版、埼玉県南に対する秩父あたりの位置づけになるんでしょうか。