ルート66

senzan2008-02-04

 『モンスターズ・インク』の絵本が読み終わったので、今度は『カーズ』の絵本を毎晩添い寝しながら読んでいます。この本もまたディズニーの「声に出して読む物語」シリーズの一冊で、その中にはアラジンや白雪姫の他にも、ピクサートイ・ストーリーファインディング・ニモなどもあるようです。
 『カーズ』は擬人化された自動車のお話で、スピードはあるけど独りよがりな性格の新人レーシング・カー、マックィーンが道に迷って訪れた町でいろいろな車と出会うことで成長する、というたぶん実写だとギャグになってしまうようなべたな物語です。この物語の舞台はルート66沿いの西部の田舎町、ラジエイター・スプリングスです。郊外にバイパス線のインターステートができてからというもの、旅行者はさっぱりやってこなくなり、町は衰退してしまいました。けれども、町のみんなの助けを得てマックィーンがレースで活躍した結果、この町にもまた活気が戻ってきます。
 ルート66(国道66号線)はシカゴからロサンジェルスまでつづく長大な道路で、総延長は約4000キロメートルもあります。ミズーリからカンザスオクラホマ、テキサス、ニューメキシコアリゾナといったアメリカ内陸部の諸州を通るルート66は1926年に完成しました。ルート66は別名「アメリカのメイン・ストリート」、「マザー・ロード」とも言われ、「古き良きアメリカ」のイメージを喚起する場所でもあります。と同時に、そこはブッシュ大統領を二度の当選に導いた地域でもありました。
 ブッシュ大統領の政策はネオリベラルであり、しかも保守的であるという、あらためて考えると奇妙な性格をもっています。ネオリベラリズムは一般に政府による規制を緩和し、市場の自由な競争を促進する政策ですから、個人主義的です。これに対して保守派の立場は宗教的な価値を重視し、性別を問わない結婚や中絶は個人の権利であるという考え方を批判します。ネオリベラリズム保守主義の連合は傍目には無理筋のように見えますが、しかし、アメリカの風土を考えるとかならずしも矛盾しているわけではありません。
 アメリカの建国の父たちは、イギリスによる宗教的迫害と植民地支配を受けた経験から、強力な中央政府の存在を忌避しました。彼らはキリスト教アレゴリーアメリカを理解するとともに(ピルグリム・ファーザーズは出エジプトであり、アメリカは約束の土地である云々)、政府に依存する気もなければ、政府に依存のしようもないフロンティアにおいて独力で生活を築いてきたひとたちです。こうした国では自由が伝統であり、宗教が自由でした。ルート66沿道に広がる風土とはそういうものです。
 ひるがえって日本の場合はどうでしょうか。ネオリベリズムと保守主義は日本でも小泉政権において連合していました。けれども、アメリカ的風土のないこの国で、この連合にどのような基礎があるのでしょうか。あるとしたら、一つは左派の既得権に対する批判という点、もう一つは自由化によって解放された欲望を囲い込むための道徳に対する支持というところでしょうが、いずれにせよアメリカのようには伝統的なシンボルは使いにくいように思います。
 アメリカでは明日はスーパーチューズデーで、大統領選挙の候補者が本格的に決まりそうです。今年の選挙でそうしたブッシュ的な連合は曲がり角を迎えるのでしょうか。

Cars (Disney/Pixar Cars) (Read-Aloud Board Book)

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ルート66をゆく―アメリカの「保守」を訪ねて (新潮新書)

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