体育の先生

 胸がやっぱり痛むので今日は病院に行ってきました。診断はちょっとはっきりしないところもあるんですが、肋骨の骨折だろうということで、ひも状の絆創膏で固定し、安静にするようにと言われました。
 この病院のお医者さんには以前子どもが突き指のような痛みを訴えたときにお世話になったことがあります。こちらがあれこれ症状を伝えようとしているのを聞いているのか、いないのか、子どもの指をちょこちょこっと触っているうちに「はい、治った」と勝手に治してしまった先生です。そういう先例もあったので、こちらを訪ねました。
 コンクリート平屋建ての病院はけっこう年季が入っていて、部屋の中も全体に薄暗く、先生の受け答えも突き放した感じで、かならずしもホスピタブルな印象ではありません。待合室はお年寄りであふれていて、昭和三〇年代に東南アジアのどこかでデング熱にかかりまして、とかそういう昔話をしていました。たぶんみなさんリウマチ患者なんでしょう。診察室の卓上には無造作に本が積んであり、確認できた背表紙だけでも『診療報酬点数の早見表』、『新・医学ユーモア辞典』、『浦和医師会創立五十年記念誌』など、ザ・町医者感ただようライン・ナップです。
 先生の見立てはかならずしもよい結果ではありませんでしたが、自転車で横転したわりには頭を打ったわけでもなく、子どもが骨折したわけでもないので、まだましな方だったのかなと思います。先生にも「体育の先生をやってなくてよかったね」と、よく分からない慰めもいただいたことなので、しばらくはデスク・ワークに専念しようと思います。

新・医学ユーモア辞典

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