ポケモンスタンプラリー

 例年、その存在を横目に見て、受け流していたポケモンスタンプラリーについに今年は参加しました。
 これは、毎年夏にJR東日本が企画しているスタンプラリーで、首都圏95の各駅をまわってポケモンのキャラクターのスタンプを集めるというイベントです。とりあえず6個集めると(6駅乗り降りすると)、ピカチュウのサンバイザーとネックストラップ、それから記念スタンプ帳がもらえます。さらにその後も親に元気があれば、そのスタンプ帳を使って95駅回るという上級者コースもあります。これでコンプリートすると喋るピカチュウ貯金箱が全員にもらえるそうです。
 首都圏は鉄道がよく整備されているとはいえ、北は熊谷、南は大船、東は土浦、西は八王子までそのすべてを1日でまわるのは不可能です。いやらしいのは東京の周縁、都心よりも郊外に重点的に人気のキャラクターを配置していることです。しかもスタンプ台は駅構内ではなく、改札の外にあるので、その都度切符を購入するか、一日パスを利用する必要があります。もっと恐ろしいのは、ラリーに便利な専用の時刻表があることです。埼京線の場合、昼間は20分に1本しか走っていないので、事前に調べておかないと効率がかなり違ってきます。
 最も恐ろしいのは夏の暑さです。冷房のきいた涼しい電車内と蒸し暑い駅の外とを頻繁に出入りするので、体力を消耗します。子どもはポケモン集めに興奮していて暑さも何もかも訳が分からなくなっていますが、親にとっては苦行です。「親殺し」という言葉が脳裏をよぎる瞬間です。
 原油高で遠出を避ける傾向のあるこの夏。近場で安く済ませられるレジャーとしてはよくできているんでしょうが、テレビに映画、DSにカードゲーム、菓子パンとラーメン、JRとANAなどなど、ポケモン帝国による消費者の囲い込み、子どもの小遣いの搾り取り方には本当に圧倒されます。
 かつてJ.ボードリヤールは「ディズニーランドは、アメリカそのものがディズニー的な国であることを隠すために、あそこに存在している」という主旨のコメントをしましたが、日本の場合、社会のポケモン化は誰もが知っている赤裸々な事実なんですよね。(2008年8月5日記)