総選挙直前のカナダ

 カナダの総選挙を明日に控えて、日本でも今朝の朝日新聞政権交代の可能性があることが報じられた。金融危機を受けて政権批判の声が高まり、保守党と自由党の支持率の差が縮んだ結果、第3党の態度次第では政権交代もありうるということだ。
 スティーブン・ハーパー首相は西部出身の若い政治家で、「小さな政府」を志向する新自由主義者である。親米派であるが、日本に対しても友好的で、7月の洞爺湖サミットではお歴々の中で唯一地元市民と交流したのがハーパーだった。他方、野党第一党自由党は伝統的に福祉を重視してきた中道左派の政党である。現在の党首ステファン・ディオンは学者出身のフランス語話者の政治家で、英語が苦手ということもあって選挙戦当初は劣勢が報じられていた。けれども、今般の経済情勢の悪化を受けて、国民の生活不安が自由党的な政策への期待を高めている、ということらしい。
 ハリス・デシマ社の調査(10月12日付)によると、ここ数日で保守党は支持率がやや回復し(35%)、代わりに新民主党(18%)と緑の党(10%)がやや下げているようだ(http://www.thestar.com/election)。
 自由党のディオンはハーパー政権への批判票を他の党に分散させてはいけないと訴えている。「(新民主党の)ジャック・レイトンへの投票によって救済される雇用はスティーブン・ハーパーのポストだけだ」。支持率が26%の自由党にとっては、新民主党などの第3党に票が流れるのはなんとしても避けたい状況だ。ハーパー自身も「保守党にせよ自由党にせよ、次の政権はおそらく少数与党になるだろう」と述べている(http://www.cbc.ca/news/canadavotes/story/2008/10/12/poll-sunday.html)。
 いずれによせ少数与党という結果は、強いリーダーシップが求められる経済情勢だけに、カナダにとってはあまり好ましいものではないだろう。