堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』2008年
もういろんなところで紹介されている本だけど、やっぱり衝撃的な本。
短期間ですがアメリカで生活したときにぼんやりと感じていた事柄を、ずばり言葉にしてくれていて、そういうことだったのか、と納得させられました。
一言で言うと、貧しさのイメージを180度変えた本。
日本では貧困というとソマリアの飢餓とか、昭和恐慌のときに娘を身売りというようなイメージがあって、マクドナルドでハンバーガーを食べることや、あるいはネットカフェ難民などといいうのは貧乏のうちに入らない、あんなものは甘えだというような雰囲気があるけど(例えば竹中平蔵の発言)、「貧しさ」はそれ自体としてあるのではなく、その社会のシステムとの関連で理解すべきであることが本書を読むとよく分かります。
アメリカの低所得者たちは、仕事に追われて家事にまで手が回らず、十分な賃金もないので、栄養価の高い外食産業、つまりファストフードで食事を済ませがちである。この結果、貧困なのに肥満という現象が発生する。19世紀の風刺画では恰幅のよさは裕福さの象徴だったけれども、現在では肥満が貧困のアイコンになっている。そこにアメリカのような先進国のシステムの矛盾が表れている。
今秋になってアメリカの消費も冷え込んでいるといいます。こうした中で「肥満=貧困」的なイメージを作り出すシステムも変わっていくのでしょうか。(11月18日記)
- 作者: 堤未果
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/01/22
- メディア: 新書
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