赤の女王仮説

先日、テレビ東京の経済ニュース番組『ワールド・ビジネス・サテライト』を見ていたら東京大学のY先生が授業改革について取材を受けていました。
「ハーバードやMITとかに学生を取られないように、どうやっていい学生を東大に来てもらうかを考える時代になった。東大もうかうかしていられない。」
国内の地位にあぐらをかくのではなく、国際的な競争から落伍しないよう改革を進めていくことが必要だということなのでしょう。
ところで、ルイス・キャロルの小説『鏡の国のアリス』のエピソードにちなんだ仮説が進化生物学にあります。
赤の女王はアリスにいいます。「同じところに留まるためにはめいいっぱい走り続けなくてはいけない」(Now, here, you see, it takes all the running you can do, to keep in the same place.)
変化する環境に対しては個体も変化しつづけなければ生き残れない、という意味です。これは、変わり続けられるものだけが生き残ることができる、とも言い換えられます。
大学のような「組織」は、中の人を変えることで、変わることができます。
しかし、その中の人である「個人」自体はそう簡単には変われません。
特に学校の場合、毎年新しく学生が入れ替わります。一般企業が相手にする取引先や顧客とのあいだでは経験が共有・蓄積されていきますが、学生は毎年まっさらです。
教員の方もこれに対応しようと新しく情報や知識をアップデイトしますが、学生との間の情報の非対称性はますます小さくなっていくばかりです。
同じ人間が教員を続けていくためには、何を変えて、何を変えないのか、きちんと考えておく時代だと思います。(2009/04/21記)

病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解

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