クレヨンの色

先日の授業参観では自分の似顔絵を描くという作業をやりました。
その時、気づいたのですが、かつて「肌色」と呼ばれていたクレヨンの色は現在は「ペールオレンジ」と呼ばれているんですね。
この言い換えについては先日ネットで話題になっているを見かけたばかりだったので、なんとなくは知っていました。それは、あるタレントが、「『肌色』という言葉の使用を避けるのは奇妙ではないか」という主旨の書き込みを自分のブログでした、というものです。
http://ameblo.jp/kimiko-inui/entry-10237678694.html
この問題は日本におけるビジブル・マイノリティ(見た目で分かる外国系のひとたち)の増加と関係しています。
かつて在日外国人の大半は韓国・朝鮮系と中国系でした。けれども、彼・彼女らはエスニック・マイノリティではあっても、ビジブル・マイノリティというには微妙です。
これに対して1990年代以降に増加の顕著な在日外国人はブラジル系やフィリピン系などのビジブル・マイノリティです。また日本人と外国人との「国際結婚」も増加しています(ちなみに英語でこれに相当する表現は異人種間結婚interracial marriageという方が普通です)。
この結果、日本の学校でもビジブル・マイノリティの子弟が多く勉強するようになりました。実際、うちの子のクラスにはアフリカ系の父と日系の母とのあいだに生れた子どもが2人います(それぞれ別の家庭)。父親の出身は直接には北米かもしれません。いずれにしても、こうした文脈では「肌色」という言葉が指す色は一つではありません。
私自身は「肌色」という言葉はエスノセントリック(自民族中心的)なので、今のような社会では使用すべきでないと思います。
けれども、クレヨンや色鉛筆から「肌色」がなくなったのは、そうした政治的な正しさからではなく、単に売れないからだと思います。ビジブル・マイノリティの親はもちろん、その子弟を受け持つ教員も「肌色」入りのクレヨンは使いにくいはずです。差別だからよそうとか言葉狩りとかではなく、授業運営上、まったく不必要な摩擦やコストをかかえこんでしまうからです。
実際のところどういう経緯で色の名前が変更されたのかは分かりません。政治的な理由が考慮された結果かもしれません。けれども、現場の教員にとってはもっと経済的な動機が強かった、と私は想像しています。