コーチの高キャリア化

子どもが週1回通っているサッカースクールのコーチたちは、Jリーグ1部や日本代表の経験者たちです。
サッカーの盛んな浦和という土地柄もあるのでしょうが、幼稚園児や小学生にサッカーを教えるにしては十分に立派な肩書です。
この背景には、やはり保護者自身の高キャリア化があるような気がします。
うちの子はこの4月からはサッカー少年団にも通うようになりました。そこに子どもを連れて来ているお父さんたちを見ていると、いずれもサッカーの経験者で、相応の技量をもっています。まだはっきりと聞いたわけではありませんが、その中には少年団のコーチよりも高キャリアの父兄もいることでしょう。
もちろん少年団のコーチたちには父兄にはないコーチングの実績があります。少年団で代表をされている方は指導者ライセンスA級をもっていますし、C級ライセンスのコーチも三人います。また小学生のような年少の選手を指導するのにはそれに固有なノウハウも必要でしょう。身体の成長の仕方や心の発達段階などです。過去の選手経験だけで子どもたちを指導できるほど「教育」は甘くはありません。
けれども、少年団になくてスクールのコーチにあるものもあります。それは「上を見せる」「世界を見せる」とでもいうような経験です。
サッカースクールのコーチたちはブラジルに留学し、プロで活躍し、ジャパンを背負って代表選を経験したことがあるような人たちです。彼らにはサッカーに関する世界的な水準や文化の違い、さらにはプロになるまで、プロになってから、さらにはプロ引退後のキャリアパスについての知識があります。そういう知識は属人的なものであって、メディアを通して得るのが難しいものです。
保護者が高キャリア化してきた結果、父兄が市場に求める付加価値も高級なものになってきました。サッカースクールに通ったからといって、プロ選手になれることが約束されるわけではありません。けれども、「こうすればあんなふうになれる」「あのレベルは手の届かない世界ではなく、これこれの練習をすればそこまで行ける」という生きた手本が目の前にいるというのは、大きな魅力です。
ともすると学校と塾の二世界を往復するだけの生活になりがちな子どもたちにとって、こういう世界を知っておくのは意義のあることだと思います。