幼稚園ママと保育園ママ

来るべき総選挙を控えて麻生首相厚生労働省を分割し、改革するアイディアを公表しました。その厚労省改革のなかには幼稚園と保育園の一体化という政策も含まれています。

麻生首相が提起した厚生労働省分割・再編案 麻生太郎首相が指示した厚生労働省の分割・再編を巡る調整が本格化し、26日には関係6閣僚が再編のあり方などを協議した。(中略)
首相の突然の方針に当初、首相官邸内でも議論は本格化しないとの見方が多かったが、19日の経済財政諮問会議では、文科省厚労省に分かれている幼稚園と保育園の所管を一元化する「幼保一元化」について具体案を作るよう指示。「安心社会」の具体像を示すことは、次期衆院選をにらんで国民受けしやすいという判断があったためとみられる。
毎日新聞 2009年5月26日 20時50分(最終更新 5月27日 1時30分)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090527k0000m010079000c.html

幼稚園と保育園は未就学児が毎日親元を離れて「先生」の下で過ごすという点では共通していますが、制度的にはまったく別物です。
幼稚園は教育機関であり、文部科学省が管轄する学校法人です。その目的は小学校の前段階として子どもたちに準備的な教育を行い、知能、体力、社会性などの基礎を形成することです。幼稚園のスタッフは「先生」であり、親とは異なる役割が求められます。したがってその対象となる子どもも3歳以上の、一定の自我を形成した子どもです。
これに対して保育園は福祉施設であり、厚生労働省が管轄する社会福祉法人です。保育園の目的は就業によって育児をすることが難しい親に代わって子どもを保育することです。したがって保育園が対象とする子どもには0歳児も含まれます。保育園のスタッフはかつては「保母」と呼ばれ、親・保護者に類似する役割が求められます。保育士を「先生」と呼ぶのは、他に適当な敬称がないことからくる、慣習です。
このように幼稚園と保育園は別物であり、そこを利用する保護者の身分も異なります。いずれの場合も父親はフルタイムの労働者でしょうが、たいてい、幼稚園に通う子の母親は主婦であり、保育園に通う子の母親はフルタイムの労働者です。幼稚園では送り迎えの前後に自由時間があるため、母親同士が親密になる機会(おしゃべりの時間)が豊富です。保育園では送りの後は仕事、迎えの後に夕飯があるため、母親同士が親密になる時間が希少です。また幼稚園では降園後の昼間に母親が集まって子どもたちを遊ばせる機会が少なくありませんが、保育園ではまず考えられません。
このため幼稚園と保育園とでは母親間の関係性も異なります。幼稚園ママは園外でも独立した人間関係を築きます。いわば横のつながりのあるネットワーク型です。これに対して保育園ママは先生との一対一の関係がベースで、親同士の付き合いは親密ではありません。いわば園中心のハブ・スポーク型のです。
小学校ではこの2種類の母親が混在することになります。その結果、これまで出会うことの少なかった幼稚園ママと保育園ママとのあいだでカルチャー・ショックが生まれます。しかし、その程度は保育園ママの方がより大きいように思います。小学校は保育園のような福祉施設ではないからです。子どもの就学によって保育園ママの負担ははるかに増大しましたが、幼稚園ママの負担はそれほど増えてはいないはずです。またPTAや通学班、パトロールスポーツ少年団などの活動を通して、保育園ママもネットワーク型の関係性に参入することになります。
子どもの小学校入学は、当人だけでなく、親にとっても驚きと戸惑いの連続です。我が家は保育園を利用していたので、カルチャー・ショックは小さくありません。ピカピカの一年生に喜びを感じつつ、子どもと一緒に親も学習する毎日です。